腹膜透析について
当院の腹膜透析(CAPD)について
病気などが原因で腎機能が著しく低下したときに、腎臓の働きの代わりの働きをする治療方法が透析療法です。透析療法には血液透析と腹膜透析の2つがあります。透析療法を続けていく患者様の希望や病状に応じて治療方法が選択できるように、当院では“血液透析”だけではなく“腹膜透析”にも力をいれています。腹膜透析導入の手術から、定期的な維持・管理まで当院で行っておりますので、腹膜透析に関心のあるかたや、腹膜透析をご希望のかたはご相談ください。
1.担当医師紹介
- 腹膜透析外来
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- 第3 月曜日 午前(9:00~12:00)
- 第4 火曜日 午前(9:00~12:00)
※導入を検討されているかたや、当院での維持・管理をご希望のかたは、まずは 平日9時~16時の間にご連絡下さい。
スタッフから治療に関する内容や、受診予約などについてご案内をさせていただきます。※外来診療日が変更になることがあります。最新の体制表でご確認ください。
診療体制表(https://www.toshima-chuo-hospital.jp/doctor/) - 日本内科学会 総合内科専門医
(日本内科学会ホームページ https://www.naika.or.jp/ ) - 日本腎臓学会腎臓専門医
(日本腎臓学会ホームページ https://www.jsn.or.jp/specialist/listindex.php ) - 日本透析医学会認定 透析専門医 指導医
(日本透析医学会ホームページ https://www.jsdt.or.jp/ )
堀川 和裕 医師 (偕翔会理事長)
2.腹膜透析(CAPD)とは
一般的な透析というと、患者様の血液を機械でキレイにする血液透析と呼ばれる方法ですが、腹膜透析では機械ではなく、自分の体の中にある腹膜(臓器を覆う膜)で血液をキレイにします。
カテーテルと呼ばれる管を手術によりお腹に入れて、その管を通して体内(腹膜に囲まれた腹腔内)に透析液を入れます。腹腔内に透析液を貯めておくと、血液中の老廃物や水分が腹膜の毛細管を通して透析液へとにじみ出てきます。時間をかけて透析液に老廃物などを移した後、汚れた透析液をカテーテルから体の外へ出します。これを繰り返し行います。
このように、キレイな透析液をお腹に貯めて、老廃物や水分を透析液に移し、汚れた透析液を体の外へ出して血液をきれいにする方法を “腹膜透析”といいます。
① 透析液をお腹に貯めた状態で日常生活を送ります。
② お腹の中では血液中の不要な老廃物や水分が腹膜を介して透析液に移動します。
③ 汚れた透析液をカテーテルから体の外に排出します
④ 新たにきれいな透析液をカテーテルからお腹に入れます
⑤ 繰り返します。
3.腹膜透析の利点と欠点
- 【腹膜透析の利点】
- 腹膜透析は、ご自身やご家族が操作して、透析液を体の中に入れたり出したりします。そのため、必要な機材さえあれば、病院に行かなくても自宅や会社で透析が出来ます。透析液の交換以外の時間は行動や活動に大きな制限はありません。月1~2回の定期的な通院が必要ですが、自分のライフスタイルに合わせて透析ができます。
その他に、血液透析と比べて、食事の制限が緩やかであることや、腎臓の機能が長く保持されること、循環器系への負担が少ないこと、などの身体的利点もあります。
- 【腹膜透析の欠点】
- 腹膜透析は、いろいろなことを自分で管理しなければいけません。カテーテルと皮膚のケア、カテーテルの操作、透析液の注入から排出、透析の記録(体重や尿量の計測など)、環境の整備、など自分でやらなければいけないことが多くあります。管理を間違えるとカテーテルに関連した感染症や腹膜炎を起こすことがあります。そのため、ご自身で管理ができないかたは、腹膜透析ができません。また、腹膜透析を長期間続けると腹膜が肥厚して働きが悪くなり、腸が動かなくなることがあります。それが進行すると腸が癒着し腸閉塞になることがあるため、5~7年程度で血液透析への切り替えが必要になります。
血液透析 | 腹膜透析 | |
---|---|---|
手術 | シャント作成手術 局所麻酔1時間程度・日帰り手術 | カテーテル挿入手術 局所麻酔1時間程度 |
透析をする場所 | 医療施設 | 自宅・会社・学校など |
透析時間 | 1回 4~5時間 | 連続的に24時間 毎日 |
医療施設への通院 | 週3回 | 月1、2回 |
透析効率 | 良い | 緩徐 |
心臓への負担 | 大きい場合あり | 小さい |
食事制限 | 制限が厳しい | 制限が緩いことが多い |
導入時の状況 | 血圧の変動・頭痛・吐き気 | お腹が張る・手技の習得 |
入浴 | 透析の無い日のみ | 毎日(カテーテルのケアが必要) |
短所 | 針刺しの傷み 食事制限が厳しい 心臓への負担が大きい シャント感染・トラブル | 毎日の出口部のケアが必要 腹膜炎発生の危険性 平均5~7年で血液透析への移行が必要 |
長所 | 病院に行けばよい 病院スタッフに任せられる 週3回医療者の目に触れる | 社会復帰に適している 食事制限が緩い 災害時に強い |
行動の自由 | 透析の無い日は自由 | 透析中でも行動は自由 |
4. 腹膜透析と日常生活
腹膜透析には、大きく分けてCAPDとAPDの2種類の方法があります。透析液をカテーテルから体の中にいれて、腹膜を介して老廃物や水分を取り除くことは変わりませんが、透析液を交換する方法に違いがあります。
透析液の交換を1日に3~4回、ご自身またはご家族で行います。
交換にかかる時間は30分程度です。
一例をみてみると、透析液の交換を
- 07:00に 出勤前に自宅で
- 12:00に お昼休み職場で
- 18:00に 帰宅して自宅で
- 23:00に 寝る前に自宅で
1日に4回透析液の交換を、日常生活の合間にご自身で行っています。
APDは、自動で透析液を交換してくれる機械を、寝る前にセットします。寝ている間に3~6回機械が透析液を入れ替えてくれるので、朝起きた時には透析が終わっているという方法です。
寝ているときに透析を行うため、日常生活への影響は少なくなり社会復帰がしやすくなります。
しかしこの方法は、透析が不十分になりやすいため、腎臓の機能がある程度残っている人にしか選択できません。また、就寝中は機械と体がカテーテルで繋がっているので、体位変換でのエラーや機械の音などで、睡眠に影響がでる場合があります。
寝ている間の時間だけでは透析が不十分な場合は、日中も透析液を体に貯めてさらに透析を行う方法もあります。
その他、腹膜透析を基本として、週1回だけ病院で血液透析を行う、併用療法を選択している方もいます。
5.腹膜透析 Q&A
- 腹膜透析を選択出来ない人はいますか
- 過去の手術や炎症で腹膜が癒着している人は、透析液を貯める腹腔内の容積が少なくなっていることがあるため、選択できない場合があります。また、透析液を入れると肺が圧迫されて呼吸がしづらくなるような方も腹膜透析を選択することができません。その他に、ご自身で腹膜透析に関する操作、管理ができない方も選択いただけません。
- 腹膜透析のカテーテルはどのように体にいれますか
- 手術室で局所麻酔を行い、カテーテルを挿入します。時間は1時間~2時間程度で終わります。
多くは、2~3週間入院をして、手術した部分の管理をしながら、カテーテルの操作方法や管理方法など、ご自宅で腹膜透析をやるときに困らないように、必要なことを習得していきます。
カテーテルを入れる手術だけをして、入院期間を短くする方法もありますが、外来に何度も通ってもらい、カテーテルの操作方法や管理方法などを習得していただく必要があります。
- 毎回記録しなければいけないことはどのような内容ですか
- 毎回記録をして、外来受診時には必ず記録ノートを持参してもらいます。
記録内容は、- 貯留時間・・・・透析液を何時にいれて何時に排出したか
- 注液量 ・・・・透析液をどれぐらい入れたか。体に入れる前に、自分で測りを使って計測します。
- 排液量 ・・・・排出した透析液の量。排液を貯めた袋を自分で測りを使って計測します。
- 排液時間・・・・排液するのにかかった時間
- 液体の状態・・・排液の色、透明度など
- 除水量・・・・・注駅量-廃液量=除水量
- その他、体重、血圧、尿量、飲水量、排便回数なども記録します。
- 腹膜透析の人でも入浴することができますか
- 入浴はできます。清潔に保ちながら入浴する必要があります。
カテーテルが体から出ている部分を清潔に保つために、工夫が必要です。
カテーテル出口をしっかりと覆う道具を使って水に触れないようにして入浴する方法があります。
その他に、いくつか注意点はありますが、特に道具を使わずに入浴する方法もあります。
いずれにしても、注意事項を守れば入浴することが可能です。
- 旅行にいくことはできますか
- 多くの患者さんが、旅行を楽しんでいらっしゃいます。
ただ、安心して旅行していただくためにも、事前の準備が大切です。- ・かかりつけの病院で主治医に旅行について相談しましょう。
>治療に問題がないか確認しましょう。
>旅先での緊急時に受診できる医療機関を紹介してもらいましょう。 - ・旅行中にいつどこで腹膜透析をやるか、しっかり計画して場所の確認をしましょう。
>バッグ交換に適した場所があるか事前に連絡をして確認をしましょう。 - ・透析機材の準備
>忘れ物防止のためチェックリストを使って準備しましょう。
>キット類などは少し余分に持って行きましょう。
>透析液を事前に送る場合は、どこで保管するのか確認し、届いたことを確認してから出発しましょう。
- ・かかりつけの病院で主治医に旅行について相談しましょう。